アフリカ映画 『ラストキング・オブ・スコットランド』
The Last King of Scotland、2006年のイギリス映画。

原作小説があります。
ウガンダの独裁者(と言われた)アミンの政治状況、
『エンテベの奇跡』と言われている国際法規違反、
アフリカの旧植民地における旧宗主国の横暴な振る舞いを描く映画。
制作者は、ある程度、批判的な精神を以て描いているのですが、
たぶんは予想される様々な障害を乗り越えるのに失敗している様で、
ほぼまともには伝わってきません。
ただし、『企画成立に於ける最大のテーマ』は見事に描かれてます。
主人公はスコットランド人の青年医師、
話の都合上、かなり阿呆に設定されている。
気まぐれでウガンダに来て、
クーデター直後のアミンにオーラを感じて近づく。
旧宗主国・イギリス、
クーデターを誘導したアメリカ等の
影響を排除したいアミンの思惑と一致して、
主治医に抜擢される。
チヤホヤされて有頂天。
たぶん実は諜報機関工作員である前の主治医等から、
実態とは違う情報を聞かされて混乱していく主人公、
アミンからは自分の4人いる妻の一人から
ハニートラップを仕掛けられてまんまと掛かる主人公。
だんだん状況が切迫していき、
逃げようとする主人公だが、
アミンからはパスポートを押さえられてしまい、
しかもイギリス政府関係者に泣きついても『自業自得』とか言われる始末、
ヒドイ、
自国民を切り捨ててまで権益が大事な旧宗主国。
医者だというのに、
イギリス諜報員はアミンの暗殺を命じる、
さすがに拒否する主人公だが、
演出として愛人にしてたアミン妻を無残に殺されて切れる。
おいおい、江戸時代なら、あんたが死罪だぜ、
明らかに逆恨みのうえに、医者が毒盛っちゃダメだよ。
全部、アミンに見透かされてて、捕まってしまう。
あわや、というところで、エンテベの騒動が起きて、なんとか脱出。
行くんじゃなかった、と後悔した主人公でエンド。
本質的にはダメな映画なのですが、
期せずしてか(実は本当は描きたかったのか?)
いろいろ面白い実態は紹介してます。
まず、英米等(当時の)西側主導で起こされたクーデターの
神輿に乗る形で独裁者となったアミンですが、
ちゃんとカリスマはあって、国を率いる気概はあったという描写。
そのアミンにとって、最大の欲求は
『紐付きでないテクノクラート(高級技術官僚)』であった事。
旧植民地に留まっているテクノクラートは
全員が旧宗主国の紐付きであり、
実際は諜報員ですらあること、等ですね。
そうなんですね。
要は、政治はクーデターなり、選挙なりで
主導権を取る事は可能なのですが、
その後の国家運営はテクノクラート抜きでは出来ない。
旧植民地がそれ抜きでやろうとしても経済が破綻するしかない。
逆に言えば、
旧宗主国側が一番困る(恐れる)事態とは、
利権や既得権に斟酌しない有能なテクノクラートの才能がある人が
旧植民地に行く事なのです。
つまり、この主人公、阿呆な医者みたいな若者ですね。
物語は展開の都合もあって医者にしてありますが、
例えば、若くて才能があるが現場未経験な
経営コンサルト的の天才とかが行っちゃったら見も当てられない。
そんな事態は絶対困る、
というのが、この映画最大のテーマで、
そう考えると相当に良く出来た作品だと思いますが、いかがでしょうか?