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2010-04-30

ヴォルガ・ブルガール旅行記

ロシアと、スルタンガリエフ絡みということで。

bulghar-ibnfadlan.jpg

ヴォルガ・ブルガール旅行記 (東洋文庫)
イブン ファドラーン , 家島 彦一 (翻訳)
平凡社 (2009/09)

<10世紀、ヴォルガ・ブルガール王国に派遣された
アッバース朝の使者イブン・ファドラーンが残した、
北西ユーラシア民族の風俗・習慣を活写した
第一級のイスラーム地理書。
40年余の研究を踏まえた校訂・訳注を付した決定訳>

実はよく知らないで入手した本。
イブン・ファドラーンの紀行と矢島先生の訳というだけで。
名前は聞いていました。
イスラーム圏の歴史的な紀行書は
それだけで手が出てしまいます。

え?
ヴォルガ・ブルガール?
ブルガリアの前身?
ヴォルガというからには、ロシアだよねえ。

本書の解説によると、ブルガール族というのは、
4~5世紀頃、フン族の王国の一部族で、フン・テュルク系、
ヴォルガ川西岸からドナウ川流域にいた遊牧民だったのが、
6世紀に東方からのアヴァール人の攻撃で離散
7世紀に再び大部族連合大ブルガール王国が成立
その後、分裂して一部はハザール王国に併合
他の一部はカフカースやビザンツに逃れ、
また一部はドニエストル川~ドナウ川方面に移住したという。

そしてある一部が北東へ逃れ、
9~10世紀にヴォルガ・ブルガール王国を建設、
一時はハザール王国に従属していたが、
アッバース朝との関係強化によって独立を画策していた。
まさにその使節団の随行員の報告書-というわけですね。

現存するのは往路の報告書のみだそうですが、復路もあったらしい
数種の写本が広く流布
彼の貴重な北方情報は、
イスラーム世界の地理学の発展に大きく寄与したと言われています。

ヴォルガ・ブルガール王国はその後、
ユーラシア大草原の東西を行き交う隊商路、
ヴォルガ川と支流を通じた、スカンディナヴィア・バルト海地方との
南北の河川交易の中継地の中心を占めて繁栄
13世紀にモンゴルのジョチ・ウルスに併合

モンゴルが解体に向かうと、カザン・ハーン国として独立(15C)するも
モスクワ大公国のイワン4世に征服される(16C)
その領域は、
現在のタタールスタン共和国とほぼ一致しているそうです。
スルタンガリエフはここの出身なんですね。

当時のアッバース朝は
内外の政治・治安状況、国際情勢は思わしくなく
北アフリカにシーア派政権のファーティマ朝が成立
辺境の半独立化が活発になっていた頃です。

矢島先生の本の素晴らしい所は、地図が豊富で詳しいこと。
ちゃんと当時の情勢地図と、詳しい行程図と合わせて7点も載っています。
さすがです。
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comment

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早速買って来ないと・・・

こんばんわ^^

最近いかに新刊のチェックを怠っているかが暴露されますが
この本もノーマークでした^^;

これは欲しかった一冊です
家島先生訳で東洋文庫なら利用価値十分でしょうか

早速買って来ないと
ご紹介ありがとうございます^^

No title

コメント、ありがとうございます。
お役に立てて嬉しいです。
自分も、これは少し前にたまたま見つけたものなのですが、
どう紹介しようかと、考えあぐねていたところでした。
でも「ロシアとモンゴル」のお蔭で、背景が見えてきたので、
ようやくお披露目ができた次第です。
つい、武藤さんに触発されて、ロシアもの(?)が続きました。
いい刺激をありがとうございました。
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